2007年9月19日水曜日

坂の上の雲を見上げて

数日前の休日に以前から気になっていた「坂の上の雲」ミュージアムに行ってきた。
司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」をモチーフに主人公の3人、正岡子規と秋山好古、真之兄弟について分かりやすく、丁寧にさまざまな資料が展示されている。400円の入場料は正直、安いと思った。この小説は、非常に長く壮大なテーマを取り上げていて、誰でもが簡単に読める訳ではないが一度読みはじめると途中で止まらなくなるくらいぐいぐい引き込まれてしまう力がある。司馬作品の中でも秀逸な歴史小説だ。
明治時代という、日本の歴史の中で非常に特殊な、ひとりの天皇が絶対権力を集中させて支配した45年間を振り返ってみると興味深い逸話が満載だ。鎖国から解き放たれ、世界の先進諸国に追いつき、追い越していく時代のパワーがみなぎっている。国家自体が大いなる夢を求める青年だった。目の前の大きな白い雲をいつも見上げて汗を流しながら坂道を懸命に登っていく若者こそ、当時の「日本人」だった。すべてが新しく、初めての体験だらけで、憂うことなんか何もなかった時代、明治の人々の暮らしが、風景が、匂いが、伝わってくる空間。気持ちのいい時間を過ごすことができた。

しかし、ひとつだけ残念だったのは司馬さんからの一番重要なメッセージがストレートにわかりにくい造りになっていたことだ。「たまたま偶然に日露戦争に勝利してしまっただけなのに、それ以後軍隊も国民も大きな勘違いをして、日本という国の正当な評価が出来なくなってしまった。昭和20年の8月の敗戦へのスタートがここから始まった。」という事実を我々、日本人は決して忘れてはいけない。

0 件のコメント: